こんにちは。同人サークル Regen Radikaler 代表のフナジューです。

今回は、私が制作していたノベルゲーム《Oscillatus 零》を例に挙げて、どのように完成に漕ぎ着けたのかの道のりを記事にしてみようと思います。


第1回は「企画編」として、ノベルゲームを作り始めるに至った経緯や、開発に取り掛かる前段階として必要な「ゲームの設計」についてまとめてみます。


第2回…プロット編


まず、反面教師として簡単に自分語りをしておきますと、中学生の頃に「ノベルゲームを作りたい!」と思い至った私は、小説を書いていたノリで壮大な物語のプロットを書き下ろしました。その名も《cos6°project》。登場人物30人超え、並行世界アリのとんでもないスケールのSFミステリ百合ノベルゲームでした。


しかし、小説としては書けるかもしれませんが、ノベルゲームともなるとキャラクターの立ち絵が必要となるため、個人製作ではとてつもなく大変な作業となるのは明らかです。デジタル絵も描いたことがなく、曲も作ったことがなく、プログラム経験ゼロの当時の私は、ただ夢に向かってバタ足でもがいていました。とりあえずシナリオを書いてしまおう、他のことはその後で考えよう、と。問題を先送りにし、ただ高校生活を費やし、ひたすらシナリオを書き続け、そのうち巻き込んだ同級生のメンバー達は受験勉強で忙しくなり、結果として泣く泣くプロジェクトを凍結せざるを得なくなりました。ノベゲを完成させられるのは1割くらいだと言われていますが、無謀なスタートダッシュをきると悲しい結果になるのは体験済みなので、ただ頷くばかりです。


この失敗を、単なる黒歴史として終わらせるのは悔しすぎる。そう感じた私は、その約5年間の年月を意味のあるものにしようと決心し、高校卒業と同時期に新たなノベルゲームの企画を立ち上げました。


それが、新本格シネマADV《Oscillatus 零》です。


《Oscillatus 零》は、C92で前編を頒布し、2018年の夏、C94にて後編を頒布。2年半のキャンパスライフを丸ごと費やして、なんとか完成させられることができました。


私は企画、シナリオ、キャラデザ、立ち絵・イベントCG制作、BGM作編曲、歌の作詞、効果音加工、演出、スクリプト、背景素材集め・加工、宣伝などをやりました。ほとんど私が手をかけていますが、協力してもらった要素もあります。オリジナル背景と一部のサウンドは分担をし、スクリプトも強いプログラマーにシステム部分の雛型を調整してもらい、デバッグも協力者に助けられました。パッケージとロゴデザインも発注しています。ありがたいことに後編ではイベントCGや立ち絵の制作を分担できたので、夏コミに間に合わせることができました(当日まで作ってたのはヒミツ)。



完成させられるゲームと、完成させられないゲーム。いったい、何が違うのか?


私の中学・高校時代の反省点を踏まえて、今さらながら振り返ってみます。新たに「ノベルゲームを作りたい!」と思った方々が、同じ過ちを繰り返さないことを祈って――。


その前に、数年の間で私自身は何が変わったのかも触れておきます。


もちろん、技術的な成長もありました。ペンタブを買ってデジタル絵を練習し、Cubaseを買ってDTMを勉強し、Light.vnというエンジンのスクリプトを覚えました。シナリオも毎日書いているうちに、多少は上達したと思います。意識しながら繰り返す、それがスキルアップの正攻法ではないでしょうか。


ただ、一番「完成」に関わってきたのは、企画段階での決断だったと思います。

今回は、その企画について書き連ねていこうと思います(前置きが長い)。


私の場合は、ほとんど自力で制作していたので、ゲームの方向性などについて誰かと相談したことはありません。そういったチーム制作での課題などについては未知のことも多いので、ご了承下さい。

 


媒体(メディア)を吟味する


ノベルゲームを作りたいと思った時には、恐らくなんらかのアイディアを抱いているでしょう。そのアイディアは抽象的なものかもしれませんし、ストーリーのワンシーン、あるいは実験的なシステムそのものかもしれない。とにかく、最初に動機となるアイディアがあると思います。「ノベルゲームを作る」というカタチが先でない限りは。


カタチから入ってしまうと、後から思いついたアイディアがノベルゲームという媒体にそぐわない場合、困ったことになってしまいます。そうならないためにも、まずアイディアを吟味する必要がある、私はそう考えています。


「このアイディアは、ノベルゲームという媒体で表現することが可能か」


「このアイディアは、ノベルゲームという媒体で表現する意味があるか」


この自問自答を忘れてはいけません。

媒体とは、すなわちメディア。表現をする手段の事だと思って下さい。


媒体には、それぞれメリットとデメリットがあります。


例えば、小説は全てを文字で表現するのに対し、漫画は絵と台詞でリズムを作ります。

どちらも紙媒体ですが、戦闘シーンは文字で書けばだれでも伝えられるのに対し、漫画では画力という名の「説得力」が求められます。山奥の一軒家、と文字で書くのは簡単ですが、それを絵で描くのが骨の折れる作業です。しかし、漫画が損という訳ではありません。より視覚的に、読者の想像の余地を塞ぐ勢いで、ダイレクトに表現を伝えることが可能です。その点では、とても強力な媒体だと思います。


アニメーションともなると、漫画よりも高密度に、さらに音声も掛け合わせた表現が可能です。しかし当然、制作にかかる時間と人材は膨大なものになります。


このように、媒体によって得意とする表現技法、そして制作に必要なスキルは異なります。


では、ノベルゲームではどうでしょうか。


シナリオという文字があり、立ち絵というCGがあり、BGMというサウンドがあり、スクリプトというプログラムがある。かなり幅広い「創作」が必要となるのが分かります。


それだけに、各要素を組み合わせた表現も面白いものになります。小説、漫画、アニメの良いとこ取りをしたような媒体とも言えるでしょう。立ち絵は使い回しが効くので、アニメのように毎カット描き下ろす必要はありません。漫画で描きにくい要素は、地の文で書いてしまえばそれで済みます。文字で表現しにくい間の演出は、音やスクリプトで処理すればそのまま組み込めます。


多岐に渡る知識が求められる分、イメージ通りの演出が実装できる。物語のボリュームが同じアニメよりも、少人数・短時間での制作が可能である。それがノベルゲームの強みです。


何より特徴的なのは、ルート分岐が実装できること。物語を枝分かれさせたい、エンディングを複数提供したい、そんな時にはゲーム媒体が適しているでしょう。


このように、自分のひらめいたアイディアを、ノベルゲームの性質と照らし合わせてみることをオススメします。この段階で、プレイしているイメージが浮かび上がって来れば、確信をもって次に進むことができます。



完成させられるスケールのゲームを企画する


はい、夢を観た後は現実を視る。とても重要な大前提です。

せっかく作るのであれば、「身の丈に合ったゲーム」を作りましょう。


キャラクター100人? 想像が膨らみますね。立ち絵が沢山作れるなら、ぜひ見てみたいです。

アニメーションを入れたい? 作れるのなら、挑戦してみる価値はあります。

フルボイスで作りたい? 声がつくと作品に魂がこもりますから良いですよね。可能であれば。


…………そう、可能であれば。


作れないものは、ゲームに組み込めません。自分で作れなければ、他人に作ってもらうか、自分で作れるようになるかの二択。前者はお金、後者は時間。いずれも自分の「命」を切り崩して挑むことになります。


作れる見通しが無いことには、手を出さない方が吉です。

自分の歩幅にあった挑戦を積み重ねていく。そのことを、私は失敗から学びました。


オリジナルで作る必要がある音楽や背景。


シナリオを書ききれる物語の長さ。


立ち絵を描ける登場人物の人数。


実装が可能なゲームシステム。


そういったものを、しっかり考えるのが大切です。何年以内に完成させたいか、何時間で読める作品なのか、そのためには何KBのテキスト量がいるのか、登場人物の人数は最適か――そういった計画を練ったうえで、プロジェクトを始動させましょう。



具体的に、私が《Oscillatus 零》を企画する際に何をしたのか、例として記しておきます。


①物語のスケール調整


壮大すぎるSFはやめて、プレイ時間も全部で10時間程度のノベルゲームを目指しました。それが、自分が1年半で作れるボリュームだと考えたからです。実際は2年半かかりましたが……。シナリオ執筆の苦悩については第3回くらいで書くことになりそうです。


②立ち絵ありキャラ数の抑制


ひらめいたストーリーの構造から、なるべく立ち絵が必要なキャラ数を少なくしました。

物語の中での役割を、同じキャラが担えるのであれば圧縮をします。これはプロット段階でも要相談事項です。最終的に、立ち絵ありキャラは10人程度になりました。


③システムの簡略化


選択肢によってルートが分岐する。ゲーム的なシステムは、それだけに留めました。中学の頃に考えていたノベルゲームでは、画面クリックやマップ移動などのシステムを組み込みたいと考えていましたが、プログラムについて無知な状態で手を出す領域ではありませんね……。


このように、自分に作れるゲームのスケールを調整することが、完成への第一歩となります。



夢を観るのは一瞬です。


しかし叶えるためには時間がかかります。


他人を巻き込んで有償依頼をするのであれば、相手の時間を埋め合わせるだけのお金が必要になります。一度きりしかない貴重な人生を、命を削って創作をするのであれば、それ相応の覚悟が必要となるのは間違いないでしょう。完成させられないゲームに時間を費やすほど、虚しいことはありません。時間とお金、そして己のスキルと向き合いながら、プロジェクトの規模を想定しましょう。スキルを身に付けるのにも時間が必要であるのをお忘れなく。



とまあ心構え的なことを語りましたが、その覚悟のある方に向けて、企画書について説明をしたいと思います。かくいう私は8割がた個人制作だったので、背景やイベントCGなどの発注リストしか用意しなかったのですが……。


一般的には、どういったゲームにするのか「海図」のような企画書が必要となります。制作途中でゴールを見失いそうになった時、シナリオの方向性で悩んだ時などに見直すため、文書化しておくと未来の自分が泣いて喜びの舞を踊るでしょう。実際私は踊りました。


企画書に書いておくべき最低条件は、以下の通りです。



①タイトル案(これは後から変えるかもれないので、雰囲気で)

②ジャンル

③どんな人に向けたゲームか

④ゲームのボリューム

⑤テーマ、作品で伝えたい事


実際に私が《Oscillatus 零》を作るにあたって、ネタ帳の最初のページにメモしたのは以下の内容でした。


①零プロジェクト

②ミステリ、異能、百合

③中学生以上対象。百合が好きな人、新本格ミステリファン、中二病患者など

➝ここはサークル主権限で決めてしまったので、ほとんど私個人の趣味を詰め込んだゲームになっています。その結果、趣味の合う人向けの尖ったゲームになりました。

④6時間程度(見積もりが甘かった)

⑤零に還す→無でも空でもなく、他者との思いのやり取りを重んじる

この辺はプロットの話をする時に深く語ります。


他にも、かっちり作る場合には以下の情報も必要です。


⑥費やすことのできる予算

⑦制作メンバーの割り振り

⑧大まかなスケジュール

コミックマーケット○○で頒布する、などの時間的制約はあった方がいいです。締切りが無いと人は頑張れません。そういう生き物です。


⑨大中小、3段階の目標

これは何か大きなことを成し遂げようとするときに、設定しておくとよい事柄です。ラスボスを倒すために剣が必要で、それを手に入れるために山を越えるみたいなイメージですね。

ノベルゲームを完成させるという大目標に至るために、揃えるべき各種素材の制作を中目標、一日ごとにすべきことを小目標などにして、順番にこなしていくと「作業してる感」が得られてモチベに繋がります。ゲーム制作そのものをゲーム気分で楽しむ、そういう余裕のある精神がオススメです。



そして、忘れてはならないのがコレ。


⓪何のためにノベルゲームを作るのか


自分のアイディアを形にしたいから。ノベルゲームそのものに興味があるから。お金を稼ぎたいから。みんなに遊んでもらいたいから。自分の技術を磨きたいから。自分が満足したいから。世界を変えたいから、などなど。


動機は人それぞれ、それが当たり前です。しかしこの理由が制作メンバー内で食い違うと、後々やっかいなことになりかねません。ゲームを作る目的については、しっかり確認しておくとよいでしょう。



以上で、企画段階に関しての説明は終わりです。


思いつくままに書いているので、抜けがあったらコメント欄で教えていただけると助かります。一緒に考えて成長していけたら嬉しいです。


物語の組み立て方「プロット」については、次回記事にしようと思います。

ここでゲーム全体の緩急、物語としての完成度が決まることになるので侮るべからずです。


《Oscillatus 零》は前後編をダウンロード販売しているので、気になった方はどうぞ!


http://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ206373.html

http://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ232689.html


https://regen-radikaler.booth.pm/


 

それでは、またいつかネットの海でお会いする日まで、お元気で。