こんにちは。同人サークル Regen Radikaler 代表のフナジューです。

今回も、私が制作していたノベルゲーム《Oscillatus 零》を振り返りつつ、完成までの長い道のりを1セクションごとに解説実況をしていきます。


前回…②プロット編

次回…④シナリオ編



第3回は「キャラクター編」として、シナリオを書き始めるにあたって、あらかじめ考えておくとよいキャラクターの設定について書いていこうと思います。おそらくプロット段階では、主人公とかヒロインだとかライバルだとか、物語における役割が割り振られているだけのことも多いのではないでしょうか。この役割から、より人間的で魅力にあふれるキャラクター性を肉付けしていく工程は欠かせません。


シナリオを書けば自然とキャラが動くというライターさんもいるでしょうし、それはそれでスゴいことだと思います。しかし、何でもかんでもフィーリングで対処するのは、行き当たりばったりで「それ以上」の成長が難しいような気がしますし、より言語化して一般化してみようというのがこの記事の存在意義なので、あえて思考回路を書き連ねていきます。


キャラクターを生き生きと描写する上で、私が意識して設定しているポイントは、以下の5項目です。


①プロフィール

②外見、ビジュアル

③性格、属性

④経歴、過去

⑤価値観、信念、行動原理


これらを押さえておけば、表面的な要素から内面的な要素まで見通すことができます。

どこから設定するか、とくに決まりはありません。とりあえずプロット段階で確定している要素を埋めてから、隣接している要素を練っていくのが良いでしょう。

それぞれの要素に関する注意点などをまとめてみたので、さっそく見ていきましょう……と、その前に。


あらかじめ、1つ大切なことをお伝えしておきます。


キャラクターを設定するときに忘れてはならないのは、他のキャラとのバランスを考えることです。特別な意図がない限り、外見や性格、価値観などはバラけさせるべきなのです。

理由は2つあります。読者・プレイヤー側への配慮と、作品内における役割分担の明確化です。似たようなキャラが複数いると、読み手の混乱を招く恐れがあるのは想像に難くないでしょう。極端な例を挙げると、一卵性双生児の双子キャラや、同一人物とかではない限り、ビジュアルの被りは避けるべきです。方言を喋るキャラや先生ポジション、金髪縦ロールお嬢様が複数人いてもバランスが悪い感じがします。

ヒロインが全員妹だとか、登場人物が全員メガネ属性持ちだとか、作り手の趣味嗜好を押し出すのは結構ですが、その際には他の要素で上手く差別化を図らないと、読者の中でキャラが混ざってしまいます。


また、作品内における役割分担というのは、シナリオを書く上での注意点になります。

似たような境遇・立場・価値観のキャラが存在すると、「そのキャラクターらしさ」が損なわれることになるからです。

例えば博士キャラ。あるロボットの開発者が複数人いても、それぞれを描写する必然性がありません。博士とその助手、後に裏切る研究員など、関係性を少し変えたり物語上特別な役割を与えたりする場合は、話を膨らませることができるので効果的です。しかし、まったく同じキャラ設定だとシナリオ的に無駄なので、圧縮してしまうのが良いでしょう。

初期プロット上の別々のキャラの役割を同じ人物に担わせることができる場合は、そうしてしまった方が一人あたりのキャラの活躍を増やすことができます。立ち絵枚数の削減にもなるので、絵師さんの負担を考えるならベターでしょう。同じことが、プロットでイベントが発生する場所と背景枚数にも当てはまるのですが、これは次回のシナリオ編で触れようかと思います。


さっそくと言いつつ、また脱線してしまいましたね。では今度こそ、キャラ設定の具体的な内容を見ていきます。


①プロフィール


いわゆるステータスですね。括弧内のものは、必要に応じて設定すると良い要素です。

氏名、性別(身体的、精神的)、年齢(誕生日)、(血液型)、身長、(体重)、趣味、嗜好、口調のメモなどなど。この他にも、現在所属している組織や家族構成などを書いておくといいでしょう。③の性格と被る部分も多いかと思いますが、とりあえず登場人物紹介っぽくまとめておくのが見やすくていいと思います。

いきなりプロフィールから書き出すのは難しいので、他の項目を埋めてから考えるのがオススメです。また、人間以外のモノに喩えると何になるか、というのもキャラクターのイメージを膨らませる上では効果的なので私はよくやっています。


この辺りの要素についてはとくに細かく言うことはないので、キャラクターの名前の付け方について軽く触れておきます。

よく言われることですが、母音・音節・仮名・文字数をキャラごとに変えて差別化を図るのが一般的です。発音的かつ視覚的に異なる名前の方が、プレイヤーが覚えやすくなるのは明らかです。たとえば、山崎羽衣と川垣裕美では、いずれも母音がaaaiuiで氏名ともに漢字2文字です。これはあまり好ましくありません。リアルすぎて地味な印象もあるでしょう。

榊原さくらと南ユノの場合は、パッと見も音としての響きも違うのでベターな命名な気がします(最終的には個人的な感性ですが)。名字と名前の最初の音を同じにすると韻で呼びやすい、というのも覚えておくと使える豆知識です。



②外見、ビジュアル


ノベルゲームにおいては、主要キャラに立ち絵をつけるのが恒例ですので、当然キャラクターデザインも必須事項となります。

キャラの外見は、大きく分けて肉体と服装の2つから成り立っています。肉体は遺伝によって生まれ持った要素であるのに対し、服装はキャラの性格や立場を反映する要素となりますね。これらを統一してもよし、あえたギャップを持たせてもよし。効果的にデザインしていきましょう。

イメージカラーを設定しておくと、デザイン関連に役立つことが多いのでオススメです。

目の色や髪の色、服の基調となる色、髪型などはなるべく他キャラと被らないようにするのがオススメです。学園が舞台だとキャラが皆同じ制服を着ることになるので、髪でそのキャラらしさを出していくことになりますね。


アクセサリー・小物類で印象付けるのも効果的です。アイテムはシナリオ上で意味合いを与えられますし、立ち絵の中に伏線として仕込むのに最適です。

シナリオライターとキャラクターデザイナーが違う人の場合、ライター側のまとめたキャラ設定資料を渡してデザインしてもらう流れになります。その際にライターが最低限の要素は伝えておけば、絵師さんも悩みすぎずに絵に起こせるはずです。上がってきたキャラデザ案を見て、「このキャラは黒髪のイメージだったんだよね……」なんて情報を後出ししても「先に言えよ!」って話になります。ライター・ディレクターは、各種クリエイターさん達の手間を極力省く努力をしましょう(特大ブーメラン)。


キャラデザに関してはまだまだ私も勉強中の身なのですが、ノベルゲームのキャラクターを描く上での注意点については「立ち絵編」で解説しようと思っています。


 

③性格、属性


性格はキャラクターの内面的要素ですが、外面に表れてくる部分となります。

元気、真面目、暗い、恥ずかしがり屋……など、ステレオタイプのような性格のキャラが二次元世界では蔓延していますが、もう一、二捻りくらいしても面白いと思います。よりリアルな、血の通った内臓のあるキャラを作ろうと思った場合、性格はペルソナごとに設定するのもアリです。1つの顔しかない人間は、実際は不気味ですからね。

具体例として私の作ったキャラ設定を載せておきますと、「責任感の強い新人捜査官。姉にコンプレックスを抱いている。基本的に冷静だが、戦闘時は嗜虐的なセリフを口走る」みたいな感じです。サクッと簡潔にまとめておくのが良いでしょう。より内面的な設定は、⑤の価値観でじっくり煮詰めていきます。


属性はいわゆる「萌えポイント」と定義される分類で、お姉さん属性やドジっ子属性、メイドに天使に地球外生命体まで果てしなく存在します。キャラ設定のアクセントとして、上手に使っていくと良いでしょう。真面目な学級委員長にメイド服属性を付加するとギャップ萌えが生まれるなど、可能性は無限大です。ただし、属性はあくまで調味料的なオマケ要素です。まずは性格や経歴を固めることをオススメします。



・感情移入をさせるには

これも有名なトピックですね。キャラクターに感情移入をさせたい、共感させたいという時に、押さえておくとよいポイントがあります。それは、長所と短所のバランスです。

人間が感動するポイントは人生経験に左右されることが多いため、一概には言えない部分も多いのですが、その中でも確実にキャラクターを身近に感じさせる手法として、長所と短所というものが挙げられるのです。誰しも持っている長所と短所をキャラに組み込むことで、より人間らしく捉えてもらえるという効果があります。完璧超人と何をやってもダメなキャラは、極端すぎて共感が得られにくいのに注意です。一見完璧だけど実はシスコンといった短所すくなめパターンや、勉強も運動もダメだけど正義感は強いといった長所少なめパターンが伝統的ですね。どちらかに比重を偏らせることが多いです。


これは性格における感情移入の技ですが、実際にシナリオを書く上で最も感情移入させることができるのは価値観による葛藤なので、これについては次回触れようと思います。


 

④経歴、過去


キャラクターが、物語本編に至るまで経験してきた人生。それが経歴・過去です。

人格形成に大きく関わる要素なので、プロフィールや性格を補強するためにも考えておくとよいでしょう。物語に関わってくる部分だけでも構いません。

どんなキャラにも紙1枚分の履歴書を添える某漫画家さんもいますが、情報密度はお好みです。ただ、後から変更するのは難しいので、設定する際は慎重にしましょう。


どうしてそのような過去を背負わせたのか、創作者としての意図も合わせてメモしておくと、あとでキャラ設定資料を振り返る時に役立ちます。



⑤価値観、信念、行動原理


これ、一番大事です。覚えて帰ってください。

キャラクターに魂を宿らせるには、ここを固める必要があります。どういう考え方で生きているのか、何を目的に生きているのか。なぜ戦うのか、なぜ恋に落ちたのか、なぜ嘘を吐いたのか。すべての行動には、思惑があります。創作者が設定した舞台で起こる運命的なイベントの中で、キャラクターが何を考えてアクションに出るのか、思考回路を定めておかなければ操り人形と化してしまうでしょう。これは前回プロット編で解説した「登場人物の感情曲線」に繋がる話ですね。感情同様、キャラクターの考え方を考えておくのが、一貫したキャラクター像を描く上では欠かせません。

私もシナリオを書く上で、感情と使命の相克に苦しむキャラや、矛盾した価値観で動いて狂ってしまうキャラ、敵と主人公の価値観の対比などなど、かなり気を遣いました。各キャラの行動原理を完結にまとめて、関係性を見比べてみると、作品全体のテーマが浮かび上がってくるなどの発見があるかもしれません。メッセージ性に統一感をもたせたければ、ここを見直すのも良いかと思います。

あと、これは完全に私の癖ですが、死に際に何を言い遺すかを考えると、そのキャラの「本質」が見えてくるのでオススメしておきます。




ここまで①~⑤の項目を見てきましたが、それを踏まえて言っておくことがあります。

それは、キャラクターの構成要素は物語の途中で変化しても良い、ということです。容姿が途中で変化する、つまり立ち絵が変化するのは大きな衝撃を与えられるでしょう(絵師のタスクが増えますが)。性格や信念も、ドラマの中で移りゆくこともあるかもしれません。「過去」はタイムスリップものでしか変化しませんが、それ以外は更新される可能性があります。

とくに、行動原理の段階が変わるのは、「成長」と呼ばれる現象です。価値観がアップデートされ、強固なものに生まれ変わっていくのが、ドラマチックな物語であると言えるでしょう。


大雑把に言えば、悪役と仙人的なポジションのキャラ以外は全員、物語を通して変化するのが自然です。プロット内で行動原理が大きく変化する箇所があれば、キャラの感情曲線にメモしておくといいでしょう。全キャラの成長度合いを、横軸に時間軸を取ってグラフ化するなんていうのも、視覚的に把握できるのでオススメです。


また、もうひとつ大切なことがあります。今紹介した5項目を、シナリオ執筆前に全部埋める必要はない、ということです。プロットと違い、キャラ設定はあらかじめ完璧にしなくてもよいと私は思っています。逆に、キャラ設定や世界観設定を固めすぎたせいで、がんじがらめになって筆が乗りにくくなった経験があるので……。ほどほどに埋めて、シナリオを書きながら追加で設定を深めていく。わざとキャラ設定に余白を設けておけば、後からひらめいたアイディアを融合させるのも簡単です。そんな感じの心構えのほうが、気が楽でしょう。



さて、ここまでキャラクター性の作り込みについて書いてきましたが、最後に少しプロット寄りのテクニックをお伝えしたいと思います。それは、「主人公とは何者か?」という話です。

Wikipedia曰く「ストーリーの中心となり物語を牽引していく登場人物」だそうですが、それはつまり裏を返せば、物語の中心にいるからこそ主人公たりうるということになります。

当たり前のことじゃないかと思われるかもしれませんが、創作者的にはこれが意外に難しいのです。自分で組み立てた物語において、誰の視点で辿ると1番面白く追体験ができるのか。もっとも成長するのは誰なのか。できあがったプロットを眺めて、本当に主人公がこの人物で大丈夫なのか、再確認してからシナリオに入るといいでしょう。そのチェック項目として、キャラ設定を練る意味は十分にあるかと思います。


 

キャラクター編、いかがだったでしょうか。


私も自分でまとめながら、こんなこと考えてたんだなぁと良い振り返りになりました。ノベルゲーム制作には幅広い知識と技術が必要となるので、そのヒントとしてこの記事を活用してもらえれば幸いです。

次回はシナリオ編と称して、ノベルゲームのシナリオならではの書き方や注意点などを紹介していこうと思います。



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それでは、またいつかネットの海でお会いする日まで、お元気で。