T.B.S.A.です。

今回はこれまで説明してきたモードの技法をもとに、実際の楽曲の構造を分析してみます。


分析前に、ここまでの内容を軽くおさらいしてみましょう。


①特性音を含む和音はモードを提示する。

②和音にトライトーンを含んでしまうと、コーダルな響きになってしまう。

③モードが提示されていない、もしくは複数の選択肢が考えられる『ノン・モード』という状態がある。


以上の3点を思い出してみましょう。


では、今回分析するのは、Michael JacksonのSmooth Criminalです。


https://www.youtube.com/watch?v=h_D3VFfhvs4&feature=youtu.be&t=1m6s

Smooth Criminal by Michael Jackson





では順番に分析していきましょう。

まずAメロから。


Aメロ 使用コード


Am G/B C G/B Am


イントロとAメロは同じコードです。

この時点ではAmを起点としたなんらかのモードであると考えてみます。

Amをトニックにもつモードは

・Aドリアン

・Aフリジアン

・Aロクリアン

・非モード(Aマイナー)


の可能性が挙げられますが、構成音を考えるとフリジアンは候補から除外されます。

では残りの3つのモードのうちのどれかということになりますが、非モードのAマイナーはE7の和音やトライトーンを含む和音がないため、はっきりとAマイナーとも言い切れません。

また、AドリアンとAロクリアンの特性音は、それぞれF#・Fとなりますが、コードの中にも、メロディの中にもその両方の音が現れません。


よって、3つの可能性が考えられ、そのどれとも判別がつかないため、

Aメロは『ノン・モード』の状態と考えられます。






Bメロ前半 使用コード


F G

Am中心のモードから一転、F中心のモードに移り変わります。

Fをトニックにもつモードは


・Fイオニアン

・Fリディアン

・Fミクソリディアン

・非モード(Fメジャー)


の4種類です。

Fイオニアン、Fメジャー、FミクソリディアンにはGのコードがないため、BメロはFリディアンであるといえます。



また、BメロがFという和音で始まることで、Aメロで提示されたドリアンの可能性が薄くなり、AメロがAロクリアンもしくはAマイナーであったことを印象付けます。

理由はF単音がAドリアン中に含まれず、むしろFはAロクリアンの特性音であるからです。


このように先の展開によって、それより以前の『ノン・モード』状態が解消される場合があります。




Bメロ後半~ラスト 使用コード


F G F E7


FとGを繰り返してFリディアン提示をしていたコードですが、Bメロのラストでは急にE7を挟むことで、次のサビのAmにつなげる動きをします。


これは明確なドミナント解決で、この部分はコーダル的な響きになります。

  



サビ 使用コード


Am G F G Am G F E7

Amを中心とした進行で、Aメロと似ていますがE7→Amというドミナント・モーションが入っているためAマイナーキーとなり、非モードのAマイナーになっています。




全体を総合的にみてみると、Aマイナー内のコードのみで構成されており、「じゃあこの曲は全部Amなんじゃないの?」と思うかもしれません。

ここで重要なのは部分部分の中心点がどこに存在しているか、ということです。

全体をとおしてAmだと考えると、極端にE7→Amという進行が少なく、特にBメロに関しては明らかに中心点がAmではなくFになっているため、Fのを中心とした別のモードとみるのが妥当かと思われます。




近親モード


『Cイオニアン、Dドリアン、Eフリジアン、Fリディアン、Gミクソリディアン、Aエオリアン、Bロクリアン』

この7つのモードは全て同じ構成音をもつ非常に近い関係にあるモードです。

モードどうしの移行の話になりますが、これら7つのモード内では構成音が同じためモードのチェンジがしやすく、またサウンドの印象も非常によく似たものとなります。


これら7つのモードは、全てCメジャーキーから発生するモードであり、

Cメジャースケールをペアレントとしてもつモードと呼びます。




Smooth Criminalの例ですと、使用モードはAマイナー(Cメジャー)をペアレントとしてもつモードで構成されています。

よって、構成するコードはAm中に存在するものであったとしても、中心点の異なるBメロのような展開の場合、Aマイナーとは異なるモードとなります。




さて、楽曲の分析をまとめてみましょう。


Aメロは可能性が複数考えられることから『ノン・モード』。

形をぼかし、今後の展開を予想させつつも明らかにしない作りです。


Bメロで具体的にモードを提示。この場合はFのリディアンです。

Am中心のAメロから、ここでF中心に移るとともにAメロの可能性の中にあったAドリアンを否定し、Aエオリアン・Aマイナーを印象付けます。

ラストのフレーズでE7を出し、サビのAのマイナーに向かいます。


サビでは、ドミナント・モーションを使い、Aマイナーという具体的な形をとっています。


つまりこの楽曲は、曲が進行するにつれ具体的な形を成していくわけです。



次回は、同じくマイケル・ジャクソンの楽曲からBillie Jeanを分析してみたいと思います。