はじめに


自分の作った作品が、本の形になったら。なんらかの創作をしている方には、そういったことを一度は思った事がある、という方が多いのではないでしょうか。

私は趣味で小説を書き、時々それを本にして、イベントで頒布しています。

この記事では、自分で本を一冊つくりあげ、イベントで頒布し、誰かの手元に送り出すまでの流れの一例をまとめてみようと思います。

一部の箇所は、「頒布する気持ちはないけれど、自分のために自分の本を作ってみたい!」という方にも参考になるかもしれません。


本が一冊、できるまで


まずは最低限本を作るのに必要なことと、その流れを箇条書きで。


  1. 計画を立て、締切を設定します
  2. イベントに申込みし、原稿を進めます
  3. 入稿に向けてデータを整えつつ、諸々の雑事を進めます
  4. いよいよイベント当日、本を頒布します


人によっては2と3を逆にしたりすることもありますが、(つまり、製本データを完成させてからイベントに申込むなど)おおよそこのような流れではないでしょうか。


以下で、それぞれの項目について詳しく述べてゆきます。


1.【計画立て】


まず、どんな本を作りたいのかを想像してみましょう。小説の本か、絵や漫画の本か。どんな傾向の内容を、どれくらいの分量の作品を収録するのか。

それから、作りたい冊数もおおまかに考えてみましょう。

一人で楽しむ為に、一冊あればよいのか。限られた人数に行き渡ればよいから、数冊~程度は欲しいのか。それとも、イベントにも参加してみたいのか。そして、本を作るために用意できる予算はどの程度あるか。

そしてなにより、どのイベントで頒布したいのか。


そのあたりが決まってくると、自然と選択肢が見えてきます。


今回は、短編をいくつか収録した、40P程度の小説の文庫本をCOMITIA( https://www.comitia.co.jp/ )というオリジナル同人誌即売会で発行する、という設定で流れの説明を進めていきます。


参加したいイベントについて調べてみると、次のイベントが11月の末に開催されるとわかりました。できればコピー本ではなく、綺麗に製本されたものを出したい……と、思ったとします。

では、11月のイベントに間に合うように本を刷ってくれる印刷所の、早割の締切を確認しておきましょう。

だいたい、イベントの2週間~1ヶ月程度前に、早割の締切が設定されている印刷所が多いです。

そこまでが、本を作るうえで使える時間になります。


自分の為に一冊作りたい、イベントには参加しなくてもいい、という場合も、おおまかな自分なりの締切を設けておいた方がよいと思います。

こだわりはじめると、なかなか完成しないものですし、きりがないものです。



2. 【イベントに申込む/原稿を作る】


スケジュールの目安がついたら、原稿を作ります。

11月の末にイベント、印刷所の締切は、余裕を持ちたいので早割を使って、10月の末。いまは9月ですから、だいたい2ヶ月が作業期間です。欲を言えば、1ヶ月程度で作品を作り上げ、残りの1ヶ月は本の装丁を決めたり、表紙や奥付等、本文以外のデータを作ったり、そのほかの準備を進めておきたいところです。


以上のあたりまで目算が立ったら、まずはイベントに申込みます。

2018年11月開催のCOMITIA126は9月11日に申込み締切がありますが、他のイベントも、だいたいこの程度の時期間隔で参加申し込みを締切ることが多いです。


イベント申込みが終わったら、なにをおいてもまず原稿を作ります。

なお、本文は自分で書けばいいとして、表紙等のデータを自分では作成できない、誰か人に依頼をしたい……という場合は、この時点か、あるいはこの時点よりも前に、先方に打診しておくことをおすすめします。


原稿作りについては、人それぞれですので割愛しますが、ここでもスケジュールはある程度設定しておいた方がよいかと思います。

今回は5~8000文字程度の短編を3本収録した本にしたいので、一作品につきそれぞれ一週間程度作業期間を割り当てて、執筆・推敲を重ねていきます。

作成するのは文庫本ですので、組版にもよりけりですが、個人的には40Pだとだいたい20000文字程度の文章が収録できる感覚です。

特に小説の場合はですが、ページ数がぎりぎりまでわからないことが多いので、だいたいの目安をつける為にも初稿はなるべく早くあげておきたいです。



3.入稿に向けデータを整える


いよいよ改稿も誤字脱字チェックもすみ、本文の原稿ができあがりました。

次は、入稿に向けて印刷できる形にデータを整えましょう。それから、同時並行でもろもろの雑事も片付けていきます。

小説の場合、PDF形式で入稿を受け付けている印刷所が多いです。

印刷所をまだ決めていなければ、ここで装丁ともども、入稿先の印刷所も決めてしまいます。


(この装丁を決める作業が、私は一番好きで、むしろこんな装丁を作りたいから本を出したい! と思う場合もあります。そういうときは、印刷所と装丁を決める作業は一番最初の計画立てに組み込んでしまいます)


装丁を決める、データを作る、といっても、最初はわからないことだらけかと思います。

紙の種類はたくさんあるけれど、どこを使ったらいいのか?

入稿はPDFで入稿を、とあるけれど、原稿はWordで作ってきた。PDFにはどうやって変換するのか?

あるいは、そもそも何部程度刷ったらいいのか……。


このあたりは、自分の検索能力がものをいうところかと思うので、積極的にGoogleとTwitterを活用しましょう。

たとえば、ペルーラという紙がきらきらしている、ということまでは印刷所のサイトにも書いてあると思います。けれどいまいち具体的に想像がつかない場合は、TwitterやGoogleの画像検索で「ペルーラ 装丁」「ペルーラ 表紙」等と検索してみると、さまざまな先例が出てくることかと思います。

用紙・印刷見本を用意している印刷所も多いので、あらかじめ取り寄せておくこともおすすめです)


ただし部数については、Twitterアンケートなどの結果は本当に参考になりません。

初参加なら、必ず手元に迎えたいです、と申し出てくれる方、会場でスペースに立ち寄ってくれると言う友人などを除いて、だいたい5~10部程度でも初見で手にとってもらえたら大成功、といった感覚でしょうか。

私は初参加時の部数については、単純に印刷費+諸経費(どこまで含めるかは人によりさまざまです)を相場の頒布価格で割った際に、無理のない数になる部数で、まずは参加してみる……といった感じでした。

相場については、他の方が発行している、同じようなページ数や条件の本を参考にするとよいかと思います。(事前にイベントに一般参加してみるなり、過去開催のイベントに参加したサークルのお品書きを探すと、相場はなんとなく見えてくるかと思います)


装丁も決まり、入稿データを作る際は、必ず利用する印刷所のデータ作成方法についてのページをよく確認しましょう。

印刷所によっては、電話で対応してくれるところもあるので、調べてもわからない場合は質問をしてみるのも手です。


入稿をしたら、あとは製本以外のイベントの準備を整えつつ、当日を待つばかりです。



4.イベント当日


いよいよイベント当日です。

……とはいえ、先の項目でも述べましたように、イベント当日までに、必要なものの準備もしておいた方がよいでしょう。

たとえば、


  • テーブルクロス
  • 値札
  • ミニイーゼルやポスタースタンドなど、本やお品書きを立てて視線誘導するための什器
  • お品書き(後述する事前告知にも使えますし、当日はコンビニでA3サイズに印刷して掲示すると、目に留めてくださる方は多いです)
  • おつりの小銭(100円玉と500円玉)


でしょうか。

特にお品書きは、あればよりよいな、程度のものですが、これがあると立ち止まってくださる方が少々多くなる印象があります。こういう本を頒布しています、という自己紹介を、本を開かずとも通りがかりにぱっと目に留めていただけるのが大きい気がします。


それから、できれば事前に、「こんな本を発行します」ということを、スペース№とともにTwitter等で告知しておくこともおすすめです。

事前にサークルチェックをする方は多いですし、事前に試し読みなどで興味を持っていっしゃる方は、当日に数多くあるサークルのなかで立ち止まって目に留めてくださる方より、多い感覚です。


当日は、サークルチケットを絶対に忘れないようにしましょう。

COMITIAでは見本誌コーナーの設置もありますので、見本誌と、それから見本誌提出の為に必要な見本誌シールといった、重要書類一式も持参します。

特に、サークル参加案内の封筒は追加椅子を購入する為に必要ですので、使う予定がないかも、と思っても、一式そのまま持参する方がよいかと思います。


9時にサークル入場が始まり、COMITIAの開場は11時。

以降16時までイベントは続きますので、一人参加の場合は、簡単に食べられるお昼ご飯や、水分の持参も忘れずに。

二人以上での参加だったり、あるいは一人でも余裕があれば、お買い物をしにいくのも楽しいかと思います。

その際、おつり等の貴重品は、必ず手元にもってスペースを離れましょう。テーブルクロスの用意があれば、テーブルクロスで頒布物を覆い「お買い物中です。何時に戻ります」などの札を出しておくのもおすすめです。


当日(あるいはその前でも)、なにより嬉しいのは完成した本を実際に手にとってみられることです。

ああすればよかった、こうすればよかった、と思う失敗や反省点もあるかもしれませんが、それでも自分の作品が製本されて、そしてそれを誰かに手にとって貰える、という幸福な体験は格別です。


また、イベント終了後も、人によってはアフターや打ち上げに参加したり、時には感想も頂戴できたりと楽しみは続くでしょう。あるいは、反省点もたくさんでてくるかもしれません。その時は次回に活かせるならば、それもそれでよい経験です。


希望があれば通販等も設置できると、遠方の方にも自分の作品を手元に迎えていただけるかと思います。

委託通販、自家通販、あるいはその中間的な匿名配送サービスを利用しての自家通販……など様々方法はありますが、この記事では割愛します。



おわりに


この記事では、本をイベントで発行するまでの流れを記しました。

もっと細かく、詳しく書ければ、と思ったところも多々ありますが、ひとまずはこの形で、締めさせていただければと思います。


今後、余裕があれば特殊紙についての解説や、印刷所の選び方、過去に発行した本の装丁やデザインについて、効果的だった宣伝方法のまとめ、原稿制作にあたっての執筆方法、等々、書いてみたい題目はありますが、どこまで続くやら。


皆様の楽しい制作活動の、一助となりましたら幸いに思います。