PDFのバージョンを意識すると印刷がうまくいく、というお話


「頑張ってデザインしたのに、PDFで印刷したら色も透明効果もおかしなことになっちゃった!」というのは案外よくある話です。


自分のパソコンからプリンターに直接データを送れるなら救いようがあるけれど、出先で印刷するものなら?

pdfにしないと対応すらしていない。となると、もうどうしようもない?諦めてこのまま印刷?駆け込みでキンコーズ?締切を伸ばしてもらってネットプリントで3日納品?

考えても考えても解決方法が分からなくて、どんどん腹が立ってくる。

そんな経験はありませんか?


実はこのトラブル、「PDFの規格」を意識するだけで解決できてしまうんです。



▶︎キーワードは「PDF/X」


この記事の本題となる、「PDF/X」

これは「PDF」の数ある規格の中でも”いくつかの条件”を満たし国際標準化機構で定義された、印刷用途向けの規格です。



▶︎「PDF」とは


日頃当たり前のように使っているPDFファイル。

これは、アドビシステムズが開発・公開した「Portable Document Format」という電子文書用のファイルフォーマットです。


環境に左右されずに全ての環境でほぼ同様の状態で文章や画像等を閲覧できる特性を持っているのが特徴…というと、あまりピンとこないかもしれません。

「文字のアウトライン化をせずとも文字化けせず、画像を埋め込まずとも画像のリンク切れを起こさず、文字も画像もちゃんと閲覧できる」し、「スマホでもPCでも、どんな環境でも(基本的には)同じように表示される」。

これって、当たり前なようで実はとてもすごいことなんです。



▶︎PDFファイルには「バージョン」がある


PDFには実はバージョン(規格)があり、これによって可能な表現の範囲が異なります。


1993年の「pdf1.0」を皮切りに1年〜3年の頻度で更新され、1993年には日本語に追加で対応した「pdf1.3」が、2010年には「pdf1.7 level8」が発表されました。

押さえておきたいのは、2001年に発表された「pdf1.4」です。Opentrueフォントに対応したのも、透明効果を表現できるようになったのもバージョン1.4から。公開文書、いわゆる通常閲覧用のpdfデータで推奨されるのが、少なくとも「pdf1.4」以上だと言われています。

また透明効果に対応していることから、例えばネットプリントのプリントパックさんでのPDF入稿では「pdf1.4」で入稿するように指定をされています。



▶︎「PDF/X」とは


2001年、アメリカの「出版広告デジタル配信協会(通称DDAP:Digital Distribution of Advertising for Publications)」という非営利団体が「PDF/X」という規格を提案しました。

現在では印刷用PDFとしてISO規格にもなっており、世界中どこでも通用する印刷用に最適化されたフォーマットです。

・カラースペースが限定される

・フォントが埋め込み・アウトライン化される

・画像が埋め込まれる

という、環境依存の要素を極力減らしたPDFである(※私の認識です)ため、多くの印刷会社が採用しています。



▶︎「PDF/X」シリーズのできること


「PDF/X-1a」

多くの印刷会社が指定している形式です。

例えばネットプリントのイロドリさんでPDF入稿する際は、この形式が指定されています。


【要素】

・色 :CMYK、特色

・フォント:埋め込み

・画像 :実画像

・OPI      :不可

・透明効果:不可

・メディアサイズと、仕上がりサイズあるいはアートサイズを定義

・トラッピングの有無を記述する

・印刷条件(または出力プロファイル)を指定する


色の対応が「CMYKおよび特色」ということは、RGBデータには対応していないということです。

例えば「カメラで撮影した写真を印刷データに使用する」場合にトラブルが起きることが考えられます。というのも、基本的にカメラのデータ保存形式はsRGBという形式が多いからです。データをCMYKに変換しないといけません。

特にindesignでデータを作成する場合には注意が必要です。Illustratorなどでは一つのファイルの中にRGBとCMYKのデータを混在することはできませんが、indesignではCMYKとRGBの混在ができてしまうからです。



「PDF/X-3」

ほとんど日本の印刷業界で使用されていない形式です。

「PDF/X−1a」とたいして変わらないため、割愛します。



「PDF/X-4」

何と言っても「透明効果」をそのままの形で保存できるようになったことがポイントです。ドロップシャドウなどの透明効果が、四角に抜けたり違う色で出力されたりする嫌なトラブルが起きにくくなりました。

今はまだ「PDF/X-1a」を使用する印刷会社も多いですが、印刷業界全体では着々とこちらに移行する流れにあります。page展という国内印刷業のおおきな展示会でもPDF-X/4の有用性と運用法について講演が行われており、今後はDTPエキスパートの課題提出形式が「PDF/X-4」に変更されると予定されています。


【特徴】

色 :CMYK、グレースケール、特色、CalRGB(Calibrated RGB)、CIELAB・ICCプロファイル付きカラー

・フォント:埋め込み( Open Type Fontも可能)

・画像 :埋め込み

・OPI      :不可

透明効果:可能

・メディアサイズと、仕上がりサイズあるいはアートサイズを定義

・トラッピングの有無を記述する

・印刷条件(または出力プロファイル)を指定する

・レイヤー情報を付加する


【ポイント】

・透明効果関係の出力異常が起きにくくなる

・透明効果オブジェクトを分割統合せずに処理できる(データがシンプル)

 →データが比較的軽い、出力ワークフローが安定かつシンプル

・PDFを演算する「RIP」が今までと違う「APPE」というものになる


▶︎APPEとは?


「APPE」とは「Adobe PDF Print Engine」という、印刷過程で用いられる演算方式のことです。「PDF/X-4」をより綺麗に出力するために使われる、「RIP」という処理のひとつです。


「RIP(Raster Image Processer)」とは、各種DTPアプリケーションで生成されたデジタル画像を「プリンタで印刷できる形式」に変換処理を行う仕組みのことを指します。

「PDF/X-4」以前は、また別の種類のRIP処理でPCアプリケーション上のデジタル画像をプリンタで処理できる言葉に翻訳していました。しかし、その言葉の生まれが古く、透明効果などのデザイン性の高い新しい画像処理になかなか対応できず、新しい翻訳方法を作る必要がありました。これがAPPEです(※私の認識です)。


「APPE(Adobe PDF Print Engine)」ですが、PDFをダイレクトに演算できることが特徴です。画像の一部を分割したり統合したりしなくていいし、印刷する寸前の最後の最後にまとめて一気にデータを変換します。だから「こういうデザインで印刷したいぞ!」とデザインしたデータが崩れにくいんです。

例えるなら、今まで「日本語の文章を分割して、それぞれを英語に、それをまた日本語に、それをまた英語に...最後に組み合わせて...」としていたところを、一回でまとめてバン!と翻訳してしまうような感じ。元の文章が同じでも、前者と後者ではきっと最後に翻訳された文章は違ってくるはずです。


詳しい処理の流れや違いに関しては、サーバーやPS等のページ記述言語等様々な要素が絡んでいて、説明が難しくなってしまうので省略します。



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▶︎まとめ


「PDFのバージョンを意識すると印刷がうまく行く、というお話」は、PDFの形式とその違いについてのお話でした。


PDFの形式を知ることで「なんでうまく印刷できないの!」というモヤモヤイライラが少しでも解消されたなら幸いです。


まだまだ勉強中なので、間違い等ございましたらご指摘ください。

最後までお読みくださりありがとうございました。



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